いちずに、ひたむきに、こつこつと。こうした生き方に感動を覚えるのは、何も日本人だけではない。フランスの短編小説「木を植えた人」は、その典型ともいえる人物の生涯をつづる

 荒れ果て、見放された高地に、人知れずドングリを植える一人の男がいた。ネズミやリスの食害にあったり、樹種が土地に合わなかったりで、育たなかった年も。男の無私の行為はやがて、二つの世界大戦をまたいで40年後、広大な森となって実を結んだ-

 物語は、男にひかれ、見守ってきた主人公の回想の形をとっている。冒頭に置くのはこんな言葉だ。<ある人が真になみはずれた人物であるかどうかは、好運にも長年にわたってその人の活動を見つづけることができたときに、初めてよくわかる>(原みち子訳、こぐま社)

 角界の苦労人、稀勢の里が第72代横綱に昇進した。「名に恥じぬよう精進致します」と、少しかみながら飾らない口上を述べたのも、人柄が表れているようで、ほほ笑ましかった

 <情熱が勝利を得るためには、失望と戦わねばならない>。愚直にけいこを重ねても、なかなか結果が出ず、悔しい思いをした日々が、よみがえってきたことだろう

 勝負の世界、人柄だけでは自身の望む「尊敬される横綱」にはなれない。勝ってこそ。それも綱の重さだ。巨木になれ、稀勢の里。