言葉はむなしく消えても、この言葉は言い続けなければならない。それは「寛容」である。トランプ米大統領の就任当日に、ローマ法王フランシスコが送ったメッセージは「あなたの決定が、豊かな精神と道徳的価値観によって導かれるよう祈ります」

 「壁ではなく、橋を築こう」とも訴えてきたが、どこ吹く風だ。不法移民対策としてメキシコとの国境に壁を建設し、費用をメキシコに支払わせるという

 いさめることも、戒めることもできないのか。就任から1週間というのに、他国と責任を、痛みを分かち合うために架けた橋は壊され、逆に壁が築かれようとしている

 トランプ氏が大統領令で打ち出しているのは、オバマ時代からの脱却であり、印象づけたいのは新たな時代の到来だろう。しかし、同じ時代の、同じ空気を吸っている多くの人の目には、過去の再来としか見えないのではないか

 彼の側近の一人、バノン首席戦略官兼上級顧問が築きたいのも壁のようだ。マスコミは「抵抗勢力だ」とし、自らを映画「スター・ウォーズ」の悪役で帝国の皇帝に仕えるダース・ベイダーに例えて、おどけた

 ローマ法王はこう続ける。「あなたの指導力の下、貧しい人や助けを必要としている人への配慮を第一の基準とする米国の偉業が続きますように」。偉業に必要なのは寛容である。