触れ込みは大事である。新作の映画は特にそうだ。スタジオジブリ作品として、初めて外国人監督が手掛けた「レッドタートル ある島の物語」はこんな具合だった

 せりふはない。だが、無人島に漂着した1人の男を巡る物語は静かに問い掛けてくる。人生とは、自然との共生とは・・・。マイケル・デュドク・ドゥ・ビット監督はこう語っていた。「一番重要なのは、シンプルに尽くすということ。人生や物事の神髄に簡潔に近づいていくことを大事にしました」

 何度も島からの脱出を試みるが失敗する男、そこに現れた1人の女性。圧倒的な自然描写に、言葉は要らない。シンプルなラブストーリーにも言葉は要らない

 かき立てられたのは想像力だった。せりふなきせりふをたどるのも、人がどこから来て、どこへ還るのかも、余白を埋めていくのは想像力しかない

 <どこなのか ここは/いつなのか いまは/どこから来たのか/どこへ行くのか いのちは?>。詩人谷川俊太郎さんが、映画のパンフレットに寄せた詩の一節だ。詩は<空と海の永遠に連なる/暦では計れない時/世界は言葉では答えない/もうひとつのいのちで答える>で終わる

 「レッドタートル」が、米国の第89回アカデミー賞の長編アニメーション賞候補に選ばれた。発表・授賞式は来月26日。朗報を待ちたい。