宇宙の謎の解明に挑む人類が、大きな一歩を記した。

 日本などの国際チームが、遠い銀河の中心にある超巨大ブラックホールの輪郭を撮影した。史上初めての快挙であり、ノーベル賞級の成果だ。

 画像では、高温のガスやちりが放つ直径1千億キロの円形の光を背景に、ブラックホールが黒く浮かび上がった。

 ブラックホールは恒星の残骸など大量の物質が圧縮された強い重力を持つ天体で、あらゆるものを吸い込み、光さえ逃れられない。その「黒い穴」の丸い輪郭を捉えたのは、世界の観測者らの協力と英知のたまものである。

 チームは、日本などが運用する南米チリのアルマ望遠鏡や欧州、南極など6カ所の望遠鏡を組み合わせて、直径1万キロと地球サイズの仮想的な電波望遠鏡を作成した。

 2017年4月、地球から約5500万光年離れたおとめ座のM87銀河の中心にあるブラックホールを観測した。 各地の電波望遠鏡を連携させることで、極めて高い解像度の観測を実現。望遠鏡がキャッチしたデータを集めて、人が見て分かる画像に再構成したのである。

 ブラックホールは、物理学者アインシュタインが提唱した一般相対性理論に基づき、1916年にドイツの天文学者によって存在が予言された。この理論の正しさは2016年に発表された重力波の検出でも証明されている。

 今回、撮影されたブラックホールは、「間接証拠」でしか示せなかった存在を、初めて「直接証拠」で証明した。

 ブラックホールを視覚的に捉えた意義は計り知れない。

 日本が南米で運用する巨大望遠鏡が、観測の一翼を担ったことも、誇りにしたい。

 地球から38万キロ離れた月面のテニスボールほどにしか見えない対象を観測するのは、至難の業だ。このため、世界各地の望遠鏡をつないで幅広く電波を捉え、仮想的に地球の直径に近い口径に匹敵するデータを集めた。「超長基線電波干渉計(VLBI)」と呼ばれる方式だ。

 日本人研究者は、データの画像化でも貢献した。国立天文台水沢VLBI観測所(岩手)の本間希樹教授らは「スパースモデリング」と呼ばれる推定方法を基に、多くの専門家に適切だと認められる画像を作るデータ処理の手法を開発し、採用された。

 今回の成功を次のステップにつなげるためには、優れた研究者の養成も課題となる。 日本は戦後、科学技術の振興に力を注ぎ、数多くのノーベル賞科学者を生み出してきた。だが、近年、予算不足から大学や研究機関が若い研究者を確保できず、科学技術立国の基盤は揺らいでいる。

 政府は科学振興に手厚い予算措置を講じてもらいたい。

 宇宙は依然、謎に満ちていおり、解明していくためには息の長い取り組みがいる。

 人類の英知を結集するプロジェクトに、常に貢献できる日本でありたい。