不平や不満、怒り、憎しみ、寂しさ。ハンセン病に苦しみ、絶望を友とした作家の残した言葉を、支えや救いにして生きてきたという

 阿南市が公募した北條民雄文学賞の大賞に選ばれた森水菜さんは23歳。10歳で発病し手足の自由が利かなくなった。受賞作は、北條に宛てた手紙の形式をとり、自らの心の内を真っすぐに見詰める

 人間は一人一人違って当たり前、なのに-。<どうして誰かよりひとつ欠けているだけの自分を受け入れてあげることができないのでしょう。そして世の中もなぜ仲間にいれてくれないのでしょう>

 熊本県阿蘇市から東京へ、北條が隔離収容された療養所の隣に立つ国立ハンセン病資料館まで、車いすの一人旅をしたことがある。必ず助けてくれる人がいた。降りだした雨、北條に問うてみる。やまない雨のないように<悲しみもいずれ止むのでしょうか>

 どうせ、かなわない。だから夢は持たずにきた。大賞を受けて、森さんは言う。「希望とか夢を持っていいんだ、私も。これは何か面白いことの始まり、いや始めなければならないのかもしれません」

 阿南市によると、森さんの受賞作「北條民雄様へ」を含む入賞作は、市内の図書館で閲覧できる。困難を抱えた人に、光をともす文学賞。今回限りというが、何とか続きを読ませてもらえないだろうか。