「自己責任」を叫んだ人のうち、どのくらいの人が彼女の名前を覚えているだろうか。今、中東で起きていることに関心を持っている人はどれほどか。先日、徳島市で人道支援家・高遠菜穂子さんの講演を聞いた

 武装勢力に拘束されたのは2004年4月。悪いのは無法者なのに、非難の矛先は高遠さんら捕らえられた日本人に向かった。行くなという所に行ったのだから仕方ない、と政治家までが便乗して、批判の大合唱となった

 解放されて帰国し、しばらく自宅から出られなかったそうだ。再びイラクに向かったのは、現地の人が心配して寄こした便りを読んで。彼らが味わっている大変な状況を知りながら、知らぬふりはできなかった

 隣国のヨルダンに拠点を構え、支援を続けている。過激派組織「イスラム国」(IS)から一部奪還されたばかりのイラク第2の都市モスルにも、水や食料、医療物資を届けた。路上には、まだ戦闘員の遺体が放置されていた

 現場の人間として、日本の議論に違和感を覚えるという。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)を巡っても「これこそ国際貢献」「危ないから撤退を」の両極端。正解は「その中ほどにあるのでは」

 残虐なのはISだけではない。「地獄の底はまだあった」。そんな現場で必要とされ、期待に応えている日本人がいる。