「わが世の春」を楽しんでいるかのようなトランプ米大統領にも、何度か挫折の過去がある

 20年ほど前のある日、通りを歩く物乞いの男性を見てこう漏らしたという。「彼の持ち金はせいぜい数ドルだろう。でも僕より9億ドルぐらい金持ちだ」。当時、不動産不況のあおりを受けて、巨大な負債に苦しんでいた

 挫折と言えば、安倍晋三首相にも就任1年でその座を去らざるを得なくなった苦い過去がある。困難を味わった者同士、馬が合うのか、初の首脳会談は2人のハグ(抱擁)で始まった

 別荘滞在にゴルフといった手厚い歓迎ぶりは、企業の接待に見えなくもない。会談は和やかに終わったが、「米国第一」ビジネスの初手だとするなら、次にやってくるのは、押して押してのトランプ流かもしれない

 仲が良さそうだったけど、というのはよくある話だ。在日米軍の撤退すらちらつかせ日本に負担増を迫る持論を封印し、日米同盟を重視する姿勢を鮮明にしたトランプ氏。大枠で協力推進を確認したものの、防衛面の負担や通商問題などの具体論に入ればどうなるか

 各国が批判するイスラム圏からの入国禁止令について、安倍首相は、内政問題として口をつぐんだ。「米国は民主主義のチャンピオン」と持ち上げるのも結構だが、真の友人関係を望むなら言うべきことは他にもあった。