ネパールの古都バクタプルで神像を作る工房をのぞいたことがある。差し込む光が頼りの作業場で、職人たちが何やらせっせと手を動かしていた。「今、像を汚しているところだ」。どうして? 「古く見えるだろ。その方が高く売れるんだ」

 ぶらりと来た見学者を断らないぐらいだから、あくどい商売をやっているわけではないのだろうが、土産店に並ぶ程度の”骨董(こっとう)品“も、巡り巡ればどうなることやら。この地を襲った一昨年の大地震より、ずっと前の記憶である

 骨董風の像ならご愛嬌(あいきょう)。薬九層倍というものの、こちらは悪意たっぷりの偽物だ。C型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品が相次いで見つかった。医師の処方が必要な「医療用医薬品」も、場合によっては注意が必要だとは知らなかった

 驚いたのは、「現金問屋」と呼ばれる卸売業者の存在である。都道府県知事の許可を得た上で営業しており、取引は合法だが、出どころ不明の薬や偽造品の通り道になっていた

 公定の薬価が28錠で153万円もする薬にもかかわらず、卸元の業者は、持ち込んだ人物の身元も十分に確認していないという。そんな薬が転売、転売の末、患者に届いたのである

 本物か偽物か、真贋(しんがん)を見極められる患者は少ない。薬の仕入れや販売には改善の余地があろう。命の懸かった問題なのである。