就任から1カ月、トランプ米大統領は支持者集会で自賛した。「国を再び偉大にするために信じられないほどの進展を遂げた」。雇用の確保や治安対策での成果を見てみろ、と

 相変わらずのトランプ節に聞こえる。ロシア絡みで補佐官が失脚するなど、側近を含めて深刻な混乱や失態は後を絶たない。正直なところ、氏がうそつきと呼ぶ米紙の「信じられない混迷」との表現の方が、この1カ月の実情に即している

 環太平洋連携協定(TPP)離脱に北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉、医療保険制度改革法(オバマケア)見直し、イスラム圏7カ国国民の入国禁止など。実行力は支持者を熱狂させるには十分だが、長い目で見て国益に合致するか

 一族が手掛けるビジネスが大統領職に影響する「利益相反」問題もくすぶっている。英紙相手の訴訟で、夫人が何を主張しているか、トランプ氏はご存じなのだろうか

 訴状には、自身の価値が傷つき、衣類や化粧品のブランドを立ち上げて利益を得る「一生に一度の機会」を失った、とあるそうだ。夫人にかかってはファーストレディーも商売の種らしい

 8月には、米本土で皆既日食が見られる。追っかけもいるほど人気の天文ショーだが、月が太陽を覆い隠す時間は、ほんの数分。何かの比喩と受け止める人も、少なくはないだろう。