<君主の座を守りたければ、悪人になる覚悟も必要だ。そして、時に応じて、その悪人の面を使ったり、封じたりするのである>。マキャベリの「君主論」は言う

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、新年の辞で「いつも気持ちだけで能力が付いてこない」と、珍しく反省の弁を述べ、国民に謙虚な姿勢をアピールした。1カ月半後に起きたのが、異母兄の金正男氏殺害事件である

 マレーシア警察は、正男氏の遺体から猛毒の神経剤VXが検出されたと発表した。前と後ろから女2人が正男氏の顔に液体を塗ったとみている。逮捕された女の1人には犯行後、VXによる症状があったという

 在マレーシア北朝鮮大使館の書記官らが関与した可能性も濃厚になった。凶悪な事件のジグソーパズルは少しずつ形を成しつつある。いくら北朝鮮が否定しても、国家ぐるみの組織的犯行の疑いが強まるばかりだ

 マレーシアのナズリ観光相は、北朝鮮を「ならず者国家」と呼んで非難した。改めて広辞苑を引くと、ならず者には「悪い事ばかりして手のつけられない者」「ごろつき」とある

 君主論ではこうも説く。<君主は極めて慎重に振る舞い、命取りになるような悪評は避けなければならない>。事件の首謀者は特定されていないが、ここまで悪評が高まった政権に、どんな未来があるだろう。