顔写真にその背景を読み取ることはできないが、記事にその人柄を読み取ることができる。自分の果たすべき使命と役割、家庭での父、夫、息子…。温かい手に触れることも、手を握ることも、もうかなわない

 長野県の山中に消防隊員ら9人が乗った県の消防防災ヘリコプターが墜落した。搭乗者全員が犠牲となる、痛ましい事故となった。腰までの深さの雪に覆われているという斜面に残された大破した機体が、衝撃を物語っている

 現場となったのは岡谷市、松本市の境界にある、鉢伏山(1929メートル)付近だ。ちょうど鉢を伏せたようになだらかで、「鉢伏の雪が八の字に見えたら種まきを始めろ」などと言い伝えられていると「新日本山岳誌」(日本山岳会編著、ナカニシヤ出版)にある

 地元で暮らす友人に聞いた。「夏に咲くレンゲツツジの群落は見事で農事暦にもあるような身近な山。なぜ、こんな惨事が起きたのか」。パイロットは同世代だったと悲しむ

 亡くなった一人一人の軌跡はそれぞれ違う。だが遭難者を救助する、人の命を守るという一点は共通していたはず。彼らを失った思いを知人らが語っている。「とてもつらい」「頑張ってきた人がどうして」

 別れは時を選ばず、思いがけない時にやって来る。そう分かっていても温かい手が恋しい。家族ならなおさらだ。