曹洞宗吉祥寺は開山400年余の古刹。岩手県大槌町吉里吉里の高台にある。高橋英悟住職は師の薦めでこの寺に赴任した

 井上ひさしさんの小説になるぐらい「個性的な人が多い」地域。事情も分からず、当初は苦労が絶えなかった。津波が町をのみ込んだのは、それから10年、大槌の暮らしになじんできたころだ

 変わり果てた町を歩いた。遺体安置所に通い犠牲者を弔った。目を閉じたままの子ども、見知った顔も。読経が続かず、おえつが漏れた。こんな経験もあって、亡くなった一人一人を記録に残す町の事業「生きた証回顧録」づくりの代表を引き受けた

 遺族を含む町民100人で手分けして聞き取りを続けている。命の尊さ、津波の怖さを後世に伝える。大義名分とは別に、たまっていた思いを吐き出し、心に区切りをつけようとする遺族も少なくない。ひとまず回顧録の第1版、544人分が完成した

 犠牲者の3割、400人を超す人の行方が今も分からない。「ご遺体があり、葬式を出せることがどれだけありがたいか」。津波災害は、それほど過酷だ

 愛する人を突然奪われた悲しみを癒やすのに、6年では短すぎるのだろう。3月11日が近づくと、決まって心が大きく揺らぐのだという。そんな町の人に寄り添って、これからも生きていく。東日本大震災、あす七回忌。