身びいき。韓国では「腕が内に曲がる」と言うそうだ。<少しでも自分に縁やゆかりのある者には腕が内側に曲がるように情も傾く>。おのずと、というわけである(「韓国朝鮮ことわざ辞典」徳間文庫)

 朴槿恵(パククネ)大統領が罷免された。親友の崔順実(チェスンシル)被告の利益のために大統領の地位と権限を乱用した、と憲法裁判所は断じた

 ことわざからすれば、親友を腕の中に抱え込んだのは朴氏となるが、国政介入事件の経緯をみれば、抱えられたのはむしろ朴氏のようである。少々気の毒な気もするが、1979年に暗殺された父・朴正熙(パクチョンヒ)元大統領の時代から、崔一家とのつながりは危険視されていた。先にあるのはこれまで以上のいばらの道だ

 87年の民主化宣言から30年がたつ。それでも政経癒着や縁故人事、政権周辺の利権享受が続く。大統領経験者がことごとく晩節を汚し、問題の所在ははっきりしているのに、どうして改まらないのだろう

 指折り数えていて気が付いた。田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件が起きたのは、敗戦から31年がたった76年。民主主義という道具を手に入れても、使いこなすまでには、いささか時間がかかるようである

 そうだとしても、アジアの波は穏やかならず。民主主義陣営の主要なプレーヤーがこんな調子では心もとない。これを機に悪弊の一掃を。