海外で大けがをせずに仕事をやり遂げるためには、リスクを見極め、回避する力が要る

 1980年に放送されたNHKドラマ「ザ・商社」で、山崎努さん演じる商社マンは、カナダの石油事業の開拓に失敗した。本社を経営破綻に追い込んでしまう。海千山千の外国人ビジネスパートナーを信じた結果だ。松本清張の「空の城」が原作で、モデルは十大商社の一つだった安宅産業である

 経営危機に陥った東芝の姿に、このドラマを思い出した。海外での巨額損失に足元をすくわれる構図が似ているからだ。米国の子会社はどんな思惑で、原因となった原発建設企業を買収したのか。調査が甘くなかったのか。経緯をつぶさに明らかにしてほしい

 決算発表の再延期はその深刻な現状を映す。不正会計問題も尾を引いている。株式は上場廃止の恐れがある「監理銘柄」になった。投資家の損失は計り知れない

 久しぶりに「ザ・商社」を見たのは東芝製DVDデッキだった。旧知の顔も浮かぶ。長年、年賀状で家族の成長を伝えてくれた東芝技術者は今どうしているだろう。学生時代、お世話になった国内関連会社幹部の胸中も気になった

 企業の長い歴史が人や物の縁を結ぶ。願わくは、産業界をけん引してきた東芝が危機を抜け出し、再び優れたものづくりを私たちに見せてくれることを。