すぐにフルを走ったのではない。東京・新宿のハーフが最初だった。それを弾みに、東京を3回、北海道を3回、金沢を2回、そして、徳島を走った

 東京に住む50歳代の女性ランナーの足跡である。年間3回、フルマラソンを走る。距離にすれば約127キロ。「なぜ、徳島を走るのか」と聞くと、「一度、とくしまマラソンを走ってみたら」と誘われたから

 参加者の名前が載った本紙に、目を見開いた人もいただろう。その一人一人に、二つ三つ、もっと多くの物語があるはずだ。どうして走るのか、答えも人それぞれである。そこにまた徳島を走りたくなる魅力が隠されている

 彼女は言う。いつも30キロぐらいで棄権しようかなという気になる。疲れる、つらい。それでも走ってしまう。「30キロ過ぎからただ、1キロ、1キロと走って、早く終わりたかった」

 吉野川を吹き渡る風、もてなし、共に走る人…が背中を押す。孤独なマラソンではなかった。記念品のスポーツバッグは、今後の転戦の友になるともいう

 沿道の人たちに交じり、菜の花までが声援を送っていた、とくしまマラソン。徳島の春を告げるように開かれ、10回目を終えた。だが、節目も通過点なのかもしれない。回を一つ、二つと重ねるうち長所は磨かれる。新たな視点も生まれよう。とくしまマラソンは育ち盛りである。