牟岐町出身の作家、故木本正次さんが小説「黒部の太陽」に書いている。富山県の黒部峡谷で、黒部川第三発電所の建設が進んでいた1938年12月27日のことである

未明、作業員宿舎を大規模な雪崩が襲った。突風を伴い、宿舎の一部を深い谷の対岸まで吹き飛ばし、推定78人、あるいはそれ以上の死者が出た。豪雪地帯で「アワ」(泡)と呼ばれる種類の雪崩だった

<アワとは、新雪表層雪崩のことである。古い雪が固まった上に新しい大雪が降って、それが雪崩を起こす>。その威力は想像を超える。しかも、人跡まれな奥山を選んで発生するわけでもない

栃木県の「那須温泉ファミリースキー場」付近で、登山講習会に参加していた高校生らが雪崩に巻き込まれた。スキー場の名は事故からは縁遠い。ただ、他所での例を見ても、安全に絶対はないようである

専門家によると、ゲレンデの斜面は、もともと雪崩が発生しやすい場所らしい。通常は圧雪車で雪を固めて防いでいるが、ここは20日で今季の営業を終えていた。春のドカ雪の影響もあって、現場は危険と隣り合わせだったそうだ

講習会の参加者は7校の60人以上に上る。雪山を歩き始めたばかりの生徒も多かったのではないか。相当の経験者が引率していたはずである。避けられなかった事故なのかどうか、気になる。