唐の詩人白楽天が「笋(たけのこ)を食す」と題した作品を残している。玉のようなその肌を裂き、炊き込みご飯にして10日も食べているが、ついぞ飽きない。南風が吹いたら竹になってしまうのだから、まだ食うぞ・・・。無類のタケノコ好き、春は至福の時だった

白楽天はたとえている。世の中はカタツムリの角ぐらい小さい。その上で争って何になろう、と。<石火光中にこの身を寄す>。しかも、石と石を打ち合わせて出る火のごとく、あっと言う間の人生なのに

今年の新社会人は、全国で推定89万人に上るという。出勤途中に見かけたのは、どこの企業か官公庁か。あっと言う間の人生だけど、春は始まったばかり。その姿がまぶしいのも道理である

人生の四季、春には春、夏には夏と、それぞれにやるべきことがある。南風が吹いて竹になる前に、吸収すべきを吸収しておかないと、後々が大変だ

といったことは、それぞれの持ち場で、先輩からよく聞いてもらいたい。過労自殺が問題となっての今年、小欄が気掛かりなのは、悲劇が繰り返されないか

いにしえの詩人は言っている。うまくいってもいかなくても、長くもない人生だ、楽しみなさい、口を大きく開けて笑いなさい-。寝る前にふっと力を抜いて、自分は今日笑ったか、確認してみよう。命より大事な仕事は、どこにもない。