当然と言えば、当然だろう。関西地区は、お笑いなどバラエティーの高視聴率番組が多い。ところが、名古屋地区は、フィギュアスケートだという。ビデオリサーチがまとめた2015年の「テレビ調査白書」で地域ごとの人気番組の違いが鮮明となった
 
 それはそうだ、と膝を打った人もおられよう。名古屋といえば、浅田真央選手の出身地。休養を経て復帰した、その姿を応援する視聴者が多かったに違いない
 
 小学校5年で全種類の3回転が、6年でトリプルアクセル(3回転半)が跳べるようになった。ジャンプの天才である
 
 名古屋の枠を超え、全国的に脚光を浴びたのは、15歳で初出場した05年のグランプリファイナル優勝からだった。以来、共に悔し涙を浮かべ、共にうれし涙を流す、そんなファンが増えていく
 
 筆者がその一人となったのは14年2月のソチ五輪。ショートプログラムで16位と大きく出遅れながらも、フリーで圧巻の演技を見せた。限界を超える、超えた表情が感動を呼んだ。メダルに届かなかったが、見守っていた観衆も視聴者も、メダリストへと変わらない、惜しみない拍手を送っていた
 
 おととい夜、国民的ヒロインが「フィギュアスケート選手として終える決断」をした。これまでの足跡、これからの人生に贈られるのは、たくさんの見えない花束である。