語り尽くせない思いを、一つの詩が言い当てていることがある。「3・11を心に刻んで2016」(岩波書店編集部編)で作家小野正嗣さんが引いた英国の詩人ジョン・ダンの一節もそうだ。<ひとはみな大陸の一片、全体の一部、どんな人の死もわたしを削る わたしも人類のひとりだから>
 
 今月初め、熊本県益城町を訪ね、帰県した翌日、1人暮らしの男性の死亡が伝えられた。町内の仮設住宅に入居していた61歳、孤独死とみられる、と

 一歩、土を踏みしめた地は見ず知らずの土地ではなくなる。「同じ町内でも、仮設住宅団地の建つ所は寒い」と傍らの人が言っていたのを思い返した。見ず知らずの人の死が胸に迫る

 「数日前から男性の姿を見かけない」。仮設住宅団地の自治会長はそう思い、町に連絡したという。住み慣れた家からわずかな距離であっても、避難先は別天地のような気になる。3カ月、半年たてばといわれるが、環境に慣れるのに要する月日は、人それぞれである

 昨年8月以降、熊本県内のみなし仮設住宅に入居する1人暮らしの、少なくとも13人が亡くなったという。誰にみとられることなく、「さよなら」も言わずに去ったのだろうか

 熊本地震、「4・14」から1年を迎えた。詩を胸に響かせながら、つぶやいてみる。「どんな人の死もわたしを削る」。