夢はツアーガイドだったという。出身国・ベトナムの友達に日本を紹介したい、と話していたという。漢字の勉強に打ち込んでいたそうだ。「好」は一つ上の学年、小学4年生で習う。その前から、日本を好きでいてくれたリンさんである
 
 「信」を習うのも、同じく小4。誰も信じてはいけなかったのだろうか。そう教えなければいけなかったのだろうか。千葉の小3女児殺害事件で、近くに住む小学校の保護者会長が逮捕された
 
 容疑者には小さな子どもがいて、見守り活動にも熱心だったようである。リンさんも、毎朝のように通学路で顔を合わせていたのではないか。何事かあれば、きっと守ってくれる。そう思いこそすれ、怪しむことなど、かけらもなかったはずである
 
 危険は、どこに転がっているか分からない。これから、誰を信じればいいのか。小さな子を持つ保護者は、心配を募らせているに違いない。スクールバスなど、新たな安全対策を考えるべき時期なのかもしれない
 
 卑劣の「卑」の字は、中学生になってから学ぶ。「好き」とは異なり、その意味は、相応の年齢にならなければ分かるまい。疑うことも知らないうちに、リンさんは殺され、遺棄された
 
 「なぜなの、どうして」。大声で叫びたかろう。幼い命の問い掛けに、私たちはどう応えていけばいいのだろうか。