のんきと見える人々も、心の底をたたいてみると、どこか悲しい音がする。そういうものらしい。ピエロの頬を伝う涙の化粧も、こっけいさの裏にある感情の厚みを表している
 
 おどけ者のピエロに哀感を加え、芸術にまで高めたのは19世紀のパリ、フュナンビュール座の人気俳優だったドビュロー。涙を流す道化師は、同時代の知識人にも愛された。フランス映画の名作「天井桟敷の人々」は、死の直前まで舞台に立ち続けた彼を巡る物語だ
 
 こうした話からは、遠い場所にあるような気もする。だがどうだろう吉本新喜劇。そこに上がるまで、例えば食堂のシーンでのひとこけにも、観客には見せない苦労があるに違いない
 
 徳島市出身の新喜劇俳優、中山美保さんが亡くなった。しばらく姿をお見かけしないと思ったら、舞台出演後に体調を崩した2009年から、自宅で療養していたそうだ

 個性的な人が多い新喜劇にあって、整った顔立ちが光った。マドンナ役で、母親役で、脇から芝居をぴりりと引き締めた。新喜劇に入り40年余、積み重ねた経験には、きっと涙も含まれていたはずだ

 この世界は一つの舞台で、人は役者にすぎない、という。だとすれば、人を笑わせる側でいたい。「喜劇人で幸せだった」。78年の生涯の幕を閉じるに当たって、聞けばそう答えてくれたのだろう。