格闘技選手のような風貌からは想像できない、その歌声に驚いた。甘く切ないバラードが会場に染み渡っていく。吉野川市出身のキーボード奏者Gakushiさんのライブでトリを務めたNAOYAさん。どんな人か、と後日、自宅を訪ねた

 小松島市和田島の漁師町。もう娘のものというアップライトピアノがあった。本業はシラス漁師で、今の時季はワカメの刈り取りも忙しい。31歳、2児の父。地元の消防団では、まだ若造だ

 あの夜の曲は、美容師を目指していた9歳上、居眠り運転の車にはねられ、突然他界した姉を思って作った。事故から10年余りがたったある日、ふっと浮かんできた

 思いが伝わったと感じる瞬間がある。だから歌う。家族を大事に、これからも趣味以上、本業未満でいく-といったことを丁寧に話してくれた

 音楽の魅力にとりつかれた人は、県内にどのくらいいるだろう。冷めたコーヒーを口に含んで、そんなことを考えていると…。「まだやり切れていない気がします。シラス漁の親方がいつも言うんです。なかなか漁師を究められないなあ、と。はたから見れば、もう十分なのにね」

 やればやるほどに、新たな高みが見えてくる。明日になればきっと、今日とは違う景色に出合うはず。「仕事も、音楽も、そういうものかもしれません。真剣ならね」。