陸上の桐生祥秀選手が、島根県の出雲大会で男子100メートルの「10秒の壁」に挑んだ日、鳴門市の運動場で「徳島ウイングス」の練習を見学した。来月20、21の両日、神戸市のほっともっとフィールド神戸で開かれる障害者野球選抜全国大会に初出場する
 
 51歳の西上勝監督は幼いころ、歩いていて車にはねられ下半身が不自由になった。車いすで捕手を務める。64歳になる内野手の湯源紀(ゆげんおさむ)さんは事故の後遺症で脚が曲がらない
 
 選手は現在、20~70代の17人。内臓機能も含めた身体に、あるいは知的に、それぞれがどこかに困難を抱えている。乗り越えたか、回り道をしたか、穴を開けたか。その方法は人によって違うけれど、目の前に立ちはだかった壁と向き合ってきた面々である
 
 腕一本での鋭いスイングに、グラウンドに立つまでの苦労がしのばれる。いきおい筆は美談へ流れそうだが、ぐっとこらえて強調したいのは、このチームの持つ明るさだ
 
 当たりもしなかったボールが内野まで転がった。そのうち外野まで飛ぶように。練習は裏切らない。それがうれしくて、夢中でボールを追い掛ける
 
 障害者が野球なんて、と頭から決めつける人がいる。西上監督は相手にしない。「やれる方法を見つければ、何でもできるものですよ」。野球に限った話でもあるまい。ただ今、選手募集中。