恋が芽生えるには、ごく少量の希望があればいい。愛読するスタンダールの一文に意を強くしたのかどうか。20歳以上離れた既婚の国語教師との結婚を宣言したのが高校時代、17歳のときだ。12年後の2007年、本当に実現させた
フランス大統領選の決選投票で大勝したマクロン前経済相は39歳。「自由」「平等」「博愛」のトリコロールがはためく国の、史上最年少の大統領となる
政界で名前が知られるようになったのは、この5年のことである。選挙経験も議員経験もなかったが、親EUで超党派の市民運動「前進」を率い、頂上に駆け上った
元財務検査官で元投資銀行幹部。絵に描いたようなエリートでもある。「共和国の知性の代表」との評判と、「鼻持ちならない」との批判が同居している
「自国優先」「保護主義」といったポピュリズム(大衆迎合政治)の流れに、一応のくさびを打ち込んだ。しかし、敗れたルペン氏も「反移民」「EU離脱」を掲げ、極右の候補としては過去最多の1千万を超す票を得た
拡大する一方の格差に、国民の不満が募っている。「人生は創造的だ」と、選挙戦では繰り返し未来への希望を語ったけれど、ごく少量の希望すら抱けない人々にまで届いたろうか。欧州に広がった亀裂を縫い合わせるのは、恋の道と同じく、簡単なことではない。