野にも山にも若葉が茂る。満目の緑。クールビズ、装いも軽くなれば暦通りの夏である
 
 そんな季節感を味わうこともなかっただろう。手塚治虫タッチのパロディーマンガで知られる田中圭一さん。<人生を70年だと仮定して7分の1の期間が暗黒トンネルの中だったんですもん>。コミックエッセーの「うつヌケ」(KADOKAWA)に自身を含む、さまざまな著名人のうつ体験と、そこからどう抜け出したかを描いた
 
 書店に平積みされている。自分、あるいは身近なところに、うつかと悩んでいる人が多い証しなのかもしれない
 
 サラリーマンとマンガ家の二足のわらじで働いた田中さん。転職後、自分のハードルを無理に上げたことで、調子を崩してしまう。正体の見えない病。精神科医がうつになって考えた本と偶然出合い、少しずつ「からくり」が分かってきた
 
 本書には、思想家や作家などの告白も記されている。このうち有名な脚本家は、何の前触れもなく風景から色が消え、2年間さまよった。だんだんうつを客観視できるようになり、出口が見える。ラストの「空はあざやかな青に見えています」とつぶやくシーンに、ふと仰いだ空が重なった
 
 大型連休の余韻も消えた。心身の重い、だるいを黄砂が後押しする。「五月病」にも心の健康にも、関心を向けたい時季である。