東北一のカーネーション生産量を誇る宮城県名取市、一帯は東日本大震災による津波で農機具や土が被害に遭ったという。園芸農家が再開できたのは2013年、今年も無事出荷を終えた
 
 作家の新井満さんは、この震災で離散した夫婦の再会シーンを見て、母との記憶をたぐり寄せた。高校3年だった1964年、古里の新潟市を大地震が襲う。九死に一生を得て再会した時、母は新井さんを抱きしめ、こう叫んだ。「生きてるだけでいい。会えて良かった!」
 
 ところが、地震と津波に襲われた新井さんは心に深い傷を負ってしまう。「いっそ死にたい」とさえ思うようになった。そこで助産師の母は諭した。「あんたから20代前までさかのぼると、何人の父親と母親がいると思う?」
 
 思案する新井さんに母は言う。「百万人だよ」。<赤ちゃんとは百万人のいのちの絆が産んだ”奇跡のような存在“>(本紙12年元日付特集)。百万人の、誰か一人でも欠けていれば命はなかったことになる
 
 どの国の母も、思いや願いは同じだろう。わが子の命を守りたい、と。だからこそ、戦争や紛争が起きないように、災害に遭わないように、と
 
 子から母へ、母から祖母へ、夫から妻へ、きょう、どれだけの感謝の言葉が贈られるだろう。花と共に。<母の日の母の文字ほど佳き字なし>小原啄葉。