15日付本欄、民謡「十九の春」の話が分からない、との指摘をいただいた。歌を聞くなり、水牛車に乗り合わせた女性が号泣したそうだが、その理由は、と
 
 恋の歌+涙=恋の終わり。ほかに想像できるか、と考えた筆者の甘さで、伝えることの難しさを痛感した。女性に遭遇したのは「戦争マラリア」の取材中。なおさら涙に悲恋を見たのかもしれない
 
 戦争マラリアは、沖縄県八重山地方で大戦末期、軍により病気の危険地域(既に消滅)への移住を強制された住民ら3647人が亡くなった事件である。西表島南風見田(はえみだ)の浜には、マラリアに66人の教え子を奪われた学校長が刻んだ「忘勿石(わすれないし)」が残る。16人の家族全員を失った波照間島の大泊ミツフさんのことは以前、この欄でも紹介した
 
 さて、ここからが本題である。後日、礼状が届いた。「またとこういうことのない世にしていただきたいね」。はがきの向こうに目を潤ませ、とつとつと語る大泊さんの表情が浮かんだ
 
 それから15年たつ。肉筆の一字一字が今も、フクギの並木を吹き抜ける風や、島の海の青さまで思い出させてくれる。電子メールではこうはいかない
 
 はがきの減少に歯止めがかからず、来月から62円に値上げするそうだ。差出人の情をも載せて、千里万里と旅をする、そんなはがきの一枚でも書ければ、と思う。