かつては、江戸市中でも見ることができたようだ。ただし巣作りは、大寺院の屋上など、それなりの場所でしたといい、こんな川柳が残っている。<こうの鳥びんぼう寺はきらい也(なり)>
 
 鳴門市のコウノトリも、よくよく訳あって、大麻町を営巣地として選んだに違いない。春にふ化した「蓮(れん)」「なる」「あさ」も順調に育っているようで、すんなりいけば近く巣立つそうである
 
 知らなかったのはその後で、数カ月は巣の周辺にとどまり、親から餌をもらうなどして、ようやく一人前になっていくらしい。親鳥の間引き行動には驚かされたが、厳しさも兼ね備えていなければ、種の保存はかなわないものなのだろう
 
 コウノトリ定着推進連絡協議会は、巣立った後も引き続き静かに見守ってほしいと呼び掛けている。人間が一度は絶滅に追いやった日本のコウノトリである。再び系統が絶えぬよう、環境の保全など、できる限りのことを考えたい。古川柳の先例に従えば、必要とされる水準はかなり高そうだ
 
 欧州では古くから家に幸運をもたらす鳥と信じられている。「レンコン」「鳴門」「大麻」の一部を名に携えた雌雄3羽が、各地の空を舞い、幸運を振りまく日が待ち遠しい
 
 少し気は早いが、素晴らしき伴侶を見つけ、種が連綿と続いていくことを。君たちの未来にも幸運あれ、と祈る。