かつて「風葬」に使われていた無人島に渡ったことがある。戦前、ハンセン病患者の救済に尽くした青木恵哉(けいさい)=阿南市出身=が、心ない人々の迫害を受けて、追いやられた場所だ。沖縄本島の北部、名護市・屋我地島のそばにある

 木々が絡まり合って薄暗い。人のものか、骨が散らばっている。茂みの向こうに洞穴が口を開けていた。岩礁と区別もつかない大きさの墓場の島。ここしか居場所のなかった青木たち患者の胸中を想像した。本島から400キロ余り、石垣島の白保竿根田原(しらほさおねたばる)洞穴遺跡のニュースを聞いて思い出した

 全身骨格がほぼ残った例としては国内最古となる約2万7千年前の人骨が確認されたという。高齢の男性で推定身長165センチ、虫歯のような痕もあった

 興味深いのは、遺体が岩の間に膝を折り曲げた姿勢で安置されていたことだ。土に埋めず風化させる「風葬」の可能性がある。このころ既に、人を葬る思想があったようである

 発掘を指導する稲田孝司・岡山大名誉教授によると、洞穴は旧石器時代の墓とみられ、1万年近い期間、死者が次々葬られたらしい。少なくとも19人分の骨片が見つかっている

 飢えに病気、毒蛇、たびたびの大津波…。ここで生まれ、生き、眠りについた人々も、多くの苦難を体験したはずだ。どこにいたか、当方のご先祖様もきっと。