劇作家ブレヒトの戯曲「ガリレオの生涯」に、こんなせりふがある。<真理を知らぬ者は馬鹿だが、真理を知りながらそれを嘘(うそ)だと言う者は犯罪者だ!>(谷川道子訳)
 
 ガリレオの時代、16~17世紀は、空の星々が地球の周りを回っているとする天動説が絶対だった。改良した望遠鏡で天体観測を続け、地動説の正しさを確信したものの、宗教裁判にかけられ、自説を撤回させられる。「それでも地球は回っている」はガリレオの言葉として有名である
 
 こちらは、「それでも温暖化はでっち上げだ」と言いたいらしい。トランプ米大統領が、温暖化対策の新枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した。ガリレオと同じく時代の少数派ではあるが、科学に対する態度は全く違う。不都合な事実より、目先の経済が大切なようである
 
 多くの意見を聞いての判断という。科学者の常識を知らないはずはない。その上での判断とすれば、一層罪深い
 
 世界第2位の温室効果ガス排出国が今、足踏みすれば深刻な影響が出かねない。一国の元首に「犯罪者だ!」というほどの暴言は控えたいが、被害に直面する未来の当事者なら遠慮はないはずである
 
 温暖化対策と経済成長は両立しない、というのは昔話。将来にわたって名誉も失う。まるで得のない、ソロバンの合わない選択だと、なぜ気づかない。