敗戦直後のイタリア・シチリア島を舞台に、映画の楽しさに魅せられた少年トトと、映写技師アルフレードとの触れ合いを描いた映画が忘れられない。「ニュー・シネマ・パラダイス」である

 時に、その一シーン、せりふをつぶやいてみる。<自分のすることを愛せ。子供の時、映写室を愛したように>。故郷を離れる青年トトを、アルフレードはこう言って送り出す。「すること」の多くは仕事だろうか

 企業の採用面接が解禁された。来年春卒業予定の大学生らにとっては大詰めである。就きたい仕事は、なりたい自分は、と自問自答を繰り返す人も多かろう。エントリーシートに書き入れた志望動機や自己PRには、思いのこもった言葉が並んでいるはずだ

 広告大手電通の女性新入社員が過労自殺に追い込まれた事件を受けて、働き方への関心は大いに高まっている。学生優位の売り手市場を背景に、企業の働き方改革も問われている

 就職情報大手の調査によると、既に3人に1人が内定(内々定)を得ている。辞退者が出るのも織り込んでいる企業もあるようだ

 今年の特徴として、企業を選ぶ基準に残業時間はどのくらいか、有給休暇は取れるかという働きやすさを重視する学生が増えているそうだ。トトなら、こう問うかもしれない。「自分のすること」を愛せるかどうか、と。