取りあえず使っておけば、何となく分かった気になる便利な言葉がある。「心の闇」もその一つである。訳の分からない事件が起きたとき、何度か頼ってしまったことがある。何も言っていないのに等しい。そうは思いつつ
 
 神戸の連続児童殺傷事件から20年が過ぎた。「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」と名乗った14歳の少年の「心の闇」の奥底に、どこまで迫ることができたか
 
 2年前に出た加害男性の手記を改めて読んだ。吐き気を催す記述がある。自分に酔っているようなくだりもある。制御できない魔物が、心の中で成長していったのは、なぜか。遺族の意向を無視して出版した本に価値があるとするならその点だが、回答は見当たらない
 
 3カ月半の間に小学生5人を襲い、2人を殺した「少年A」は、医療少年院に収容され、8年後に本退院している。生きていれば、もう30歳と31歳になる山下彩花さんと土師(はせ)淳君の時間は、今もランドセルを背負ったまま、止まったままなのに
 
 刑事処分可能な年齢が14歳に引き下げられるなど、事件は少年法改正の契機となった。当然の反応だろう
 
 しかし事件の「なぜ」には、まだ解答が得られていない。恐らくこの先も、と思えばむなしいが、保護者が子を、教師が児童生徒をしっかりと見詰めていれば、育つ機会を失う魔物も少なくないはず、と信じたい。