「日本人は健忘症である」。政府を代表し降伏文書調印にも臨んだ外交官で政治家の重光葵(まもる)は、A級戦犯として捕らわれた獄中でそうしたためた。記憶障害を伴う深刻な病気もあるが、無論ここでは違い、物忘れのひどいことのたとえである

 重光は歴史に対する痛切な悔悟の念とともに「健忘症」という言葉をつづっている。だが、どうせそうだと高をくくっている、少なくともそう見える為政者は今も健在である

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が成立した。参院本会議での採決は、委員会採決を省略する異例の「中間報告」の手続きで強行された。賛否を二分する法律にもかかわらず随分乱暴だ

 なぜ強行したか。学校法人「加計学園」の問題を気にしてのことらしい。丁寧に審議すれば国会が長引く。そうなると加計を巡る野党の追及が続き、世論の風当たりが厳しくなる。都議選にも影響しかねない

 禁じ手を使っても、すぐ忘れてくれる。政権は高をくくっているようである。国民もみくびられたものだ。でも、関心が薄らいでいませんか、つい先日の森友に防衛省

 国民が与えた「数の力」でずんずん決まっていくけれど、共謀罪を含めて安倍政権のやることなすこと、近々手をつける憲法改正も、これからの国の在り方を大きく変えるだろう。忘れずにいたい。