昨日の原稿で読者の方からお叱りを受けた。「損害は1隻撃沈」のくだりである。「撃沈」は敵の艦船を沈めることで、沈められた場合には使わない
 
 改めて取材ノートを見ると、講演の該当部分は「1隻沈没」となっていた。終戦から72年がたち、数少なくなった戦争を知る人の貴重な言葉を、どうしてきちんと伝えられなかったか。読者にも、講師にも、申し訳なく思う
 
 なぜ誤ったのか。考えるまでもなく、確認不足である。推敲(すいこう)の際にも読み飛ばしていたのだろう。心のどこかにおごりや慢心はなかったか。油断していたというほかはない。天は決して見逃さないようである。しくじれば、せめて対処は誠実にしたい
 
 19世紀のドイツの作家が書いている。<過ちとはりねずみは針を持たずに生まれてくる>。「世界名言・格言辞典」(東京堂出版)にある。刺された後で、そのことに気づく。後悔先に立たず
 
 今後の戒めに「過ち」を含む言葉を幾つか挙げてみる。まず論語から「過ちて改めざる、是(これ)を過ちという」。過ちを知りながら改めようとしない、これこそ過ちというべきだ。もっともである
 
 「過ちを文(かざ)る」。これも論語から。あれやこれやとごまかして取り繕う。どうにも見苦しい。だから、「過ちては改むるに憚(はばか)ること勿(なか)れ」。いにしえの金言が、いちいち身に染みる。