キューバ・ハバナに向かう機内で環太平洋連携協定(TPP)を主導したフロマン前米通商代表の姿を見つけた。昨年10月上旬のこと
 
 カリブの島国を目指す大勢の観光客に交じっていたからか。日本にとって、「タフネゴシエーター(手ごわい交渉相手)」だった彼の表情は明るく見えた
 
 安倍晋三首相や中国の李克強首相らが訪問した直後である。一昨年の7月に米国と国交が回復したキューバで何かが始まる。そんな予感があった。「両国は時計の針をどう進めるのか」。傍らの地方紙記者との会話も弾んだ
 
 ところが、トランプ米大統領は時計の針を戻したいようである。先日、渡航や商取引の規制強化を柱とするキューバ政策の見直しを打ち出した。民主化を求めるため、圧力強化へとかじを切った形だが、オバマ前政権が推し進めた政策を、ひっくり返すことで政権浮揚を図ろうという思惑も見え隠れする
 
 「冷戦はとうの昔に終わっている。私が生まれる前に始まった争いに関心はない」。オバマ氏がキューバの地を踏み、半世紀以上に及んだ経済封鎖を「時代遅れ」と断じてから1年3カ月余り。振り子はまた振れるのか
 
 「壁」をつくるのが得意な大統領だが、「壁」を壊し、約束を守ることにも上手になってほしい。それを目と鼻の先にある島国との関係から始めてはどうか。