江戸時代といえば、はるか昔と思いがちだが、そうでもない。明治の改元から100年を迎えたのは1968年10月23日だった。日本の近代化を告げた時代への郷愁と祝賀ムードに包まれ、東京の日本武道館では明治百年記念式典が行われた
 
 当時、百歳以上の人は江戸時代の生まれだった。徳川幕府の治世を生きた人と、短い間でも時代を共有できたと思うと感慨深い。安政、万延、文久、元治、慶応、明治、大正、昭和と、一人で多くの元号を経験したお年寄りもいた
 
 元号には時代の記憶が重なる。「内平らかに外成る」(史記)「地平らかに天成る」(書経)。平成の元号を発表した当時の小渕恵三官房長官はこの出典を紹介し、「平成には国の内外にも天地にも平和が達成されるという意味が込められている」とも語った
 
 残念ながら、内外ともに穏やかには治まらず、戦争やテロで天も地も鳴動した。そんな平成も、やがて幕を閉じる
 
 天皇陛下の退位を実現する特例法が先月、公布された。2019年1月1日の新元号適用が有力だという。集団的自衛権の行使容認などで揺れた、去りゆく時代は「平成百年」に、どんな言葉で評されるだろう
 
 万が一にも、強権政治が始まった時代だったと言われたくはない。政治家は平成の元号に込められた意味を、いま一度、問い直すべきだ。