ストーブの火が消え、震える人がいる。がれきを処理する重機が動かない。2011年3月11日の東日本大震災発生直後、被災地は著しい燃料不足に見舞われた。鉄道や高速道路といった大量輸送網の本線が、地震で寸断されたためだ
 
 運び手として選ばれたのがJR貨物である。日本海側のルートは生き残っていたものの、問題は南東北で、非電化区間のある磐越西線を通らなければ、拠点の福島県郡山駅にはたどり着けない。〝救援列車〟運行へ、全国から旧式車両がかき集められた
 
 鉄道員の不眠不休の奮闘ぶりが、絵本「はしれ ディーゼルきかんしゃデーデ」(童心社)に描かれている。子ども向けだが、重いタンク貨車を引いて雪の急坂で立ち往生する場面など、手に汗握る描写が続く
 
 JR貨物広報室によると、3月26日から本線復旧までの20日余り、磐越西線の緊急ルートで運んだ燃料は1万9892キロリットル。タンクローリー車約千台分になる
 
 「使命感ですかね」と照れくさそうに広報担当者。「大災害のような事態に直面したとき、自分たちが何とかするんだという魂が、今もJRには息づいている。だから鉄道は必要なのです」。交通問題に詳しい作家の冷泉彰彦さんは言う
 
 民営化から30年。極めて厳しい状況にあるJR四国の今後を議論する上でも、知っておきたい事実だ。