命あるものを殺すな(不殺生)に始まる十の戒めが仏教にはある。十善戒という。盗むな(不偸盗(ちゅうとう))、道ならぬ関係を持つな(不邪淫(じゃいん))と続く
 
 先日、親族の法事があり、住職に従って唱和していて気が付いた。十の戒めのうち、四つまでが口に関係しているのである。身を入れて読んだこともなかったので、これは新しい発見だった
 
 すなわち、うそをつかない(不妄語(もうご))、真実にそむいて言葉を飾り立てない(不綺語(きご))、口汚くののしらない(不悪口(あっく))、二枚舌で人を仲たがいさせてはならない(不両舌)
 
 この四つだけ取り出せば、言葉を使って仕事をする者の最低限のルールのようでもあるが、対象は記者にとどまらない。「説明を尽くす」を加えれば、政治家の心構えにも転用できよう。現実は、そうはなっていないところに、政治不信の膨らむ余地があるのだろう
 
 ついでに十善戒の残りの三つを挙げておくと、不慳貪(けんどん)、不瞋恚(しんに)、不邪見。むさぼらない、怒り恨まない、間違ったものの見方をしない-。並べてみれば、守れそうなものと、いつもとはいかないものが混在している十の戒めである
 
 欲を出すなと言われても、怒るなと言われても・・・。理解するのは難しくなくても、実際に行うのは簡単なことではないようだ。<知ることの艱(かた)きにあらず、行うことこれ艱し>。確かに。