見渡す限りの大草原、もう行く手には誰の背中も見えない。横綱白鵬の相撲道である。史上最多の通算1047勝に並んだ
 
 幼い日、目標となったのは、モンゴル相撲の大横綱だった父ムンフバトさんの大きな背中に違いない。1968年メキシコ五輪のレスリングで銀メダルを獲得した国民的英雄。少年は家畜の世話をしながら見詰めてきた
 
 15歳で来日。両親に挟まれて寝ていた末っ子は、土俵で厳しい稽古に耐え続けた。腰を落としながら、左右の足を前方に大きく踏み出し、体重を乗せて歩く。そのすり足が下半身をつくり上げた。それが目標を超えて、新たな目標に向かう力になってきた
 
 22歳で念願の横綱に昇進した。伝達式の口上にあった「精神一到を貫き」は、徳島市出身の紗代子夫人らと考えたという。大鵬、千代の富士、北の湖、貴乃花、朝青龍。優勝20回以上を達成した偉大な5人の横綱に少しでも近づけるように、背中を追い続けた
 
 2年前には、尊敬してやまない大鵬が持っていた32回という史上最多の優勝記録を更新した。白鵬の土俵人生にふさわしい言葉を探すなら、目標は限界を超えてこそ、記録は塗り替えるためにある、となるかもしれない
 
 横綱在位10年。優勝するたび進化を遂げ、その背中は大きくなった。道なき道、相撲道を突き進む白鵬の背中である。