ロフテッド軌道とは、まだ耳慣れないが、要は高く打ち上げて飛距離を抑えることのようである。北朝鮮が発射したミサイルの射程は、通常軌道なら1万キロを超す可能性があるという
 
 ロサンゼルスやシカゴといった米本土の大都市に届く、まがう方ない大陸間弾道ミサイル(ICBM)である。4日に続き、米政権のレッドラインとみられてきた一線を飛び越えた
 
 「国際社会の安全に対する重大で現実の脅威だ」。しかつめらしい表情で語る安倍晋三首相の言葉に異存はないが、言っていることと、やっていることの隔たりの大きさには閉口する。直面しても兼務で済ます「重大で現実の脅威」とは何だ
 
 今に始まった危機ではない。それでも資質が疑われる防衛相をかばい続けてきたのである。ようやく辞任したその日、責任者の空白を狙ったような2度目のICBM発射に、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長も高笑いしていよう
 
 防衛相を兼務したばかりで対処した岸田文雄外相は「緊急事態での外務、防衛両省の連携がよりスムーズになる」と”けがの功名“を説くが、任命権者への当てこすりのようにも聞こえる。一触即発の事態を全く想定していないからこその兼務だろうが、その判断は適切か
 
 1強政治の制度疲労が進んでいる。内なる危機。それこそ日本の今そこにある危機ではないか。