夏果てて、秋の来るにはあらず、と兼好法師は言う。やがて立秋なのに、既に夏の中に忍び込んでいるという、その気配が感じられないのは小欄の鈍感さゆえか。冷房のある現代でこれなら、と昔の苦労をしのぶ
 
 東大寺の写経所に勤務していた奈良時代の下級役人の休暇願が、正倉院に残っている。「衣服で読み直す日本史」(朝日選書)によると、洗濯休暇なるものもあって、汚れた制服を洗うためとして、3~5日の休みを申請している
 
 制服は粗末な麻の上衣とズボンだった。それも、ひとそろいしか支給されず、替えがなかったらしい。つまり着たきりである。夏場の写経所がどんなにおいか、想像するのもおぞましい。クールビズで室温の上がったオフィスも、これに比べれば天国だ
 
 下って江戸時代。<そよりともせいで秋たつ事かいの>鬼貫。秋風がそよりとも吹かない、立秋というのに。暑さには愚痴もこぼれる。昔も今も変わらない
 
 などとつらつら考えていたら、強い台風5号が、奄美から九州をうかがっている。豪雨災害発生から1カ月を迎えた福岡や大分の被災地の不安は大きかろう
 
 冷房のある現代でも、昔と同様、自然には抗しきれない人間の暮らしである。長寿迷走の台風5号。本県にも影響が出る恐れがある。進路には十分に注意し、早めの避難を徹底したい。