三十六計、逃げるにしかず―。出展は中国南朝の斉の史書「南斉書」とされる。「三十六策、走(にぐ)るをこれ上計(じょうけい)とす」。数ある戦略や戦術の中で、勝てる見込みがないときは、逃げるのが最も上手な戦い方だという意味である
 
 それに倣ったわけではあるまい。防衛省の日報隠蔽(いんぺい)問題を巡り、きのう衆参両院で開かれた閉会中審査だ。与党の反対で稲田朋美元防衛相が出てこなかったばかりか、野党の追及に、政府参考人が答弁拒否を繰り返した
 
 そもそも、稲田氏が日報データ保管の報告を受け、非公表を了承したのかどうかを解明するのが目的だったはず。本人にとっても、あらぬ疑いを晴らす絶好の場であった。出席拒否では不信感がますます募る
 
 出てこない人は学校法人「森友学園」と「加計(かけ)学園」を巡っても大勢いる。首相夫人しかり、法人理事長しかり。新国税庁長官は森友問題の質問を避けるためか、就任会見を開かないそうだ
 
 「逃げるにしかず」は全滅を避けて力を蓄え、形勢逆転を期せというところにミソがある。だが、舞台は国民注視の国会である。出席を拒んでいれば、いつか忘れてくれると考えているのなら甘くはないか
 
 閉会中審査では、与党側から「早くけりをつけて北朝鮮問題に取り組むべきだ」という発言があった。そのためにも、逃げるのは得策ではない。