戦争の「記憶」がよみがえる夏、突然、人生を断ち切られた人たちの思いに向き合う盆である

 悲しみ、後悔は何年たっても胸に去来する。東日本大震災による大津波で被災した福島県の太平洋側、浜通りでは、死者を慰霊する伝統芸能「じゃんがら念仏踊り」が行われている

 故郷に帰るのは帰郷だが、これに父母の安否を問うという意味が加わると帰省になる。打ち鳴らされる鉦(かね)の呼び掛けに応じるのは帰郷、帰省した人ばかりではない。亡き人が集い、踊る人、見る人を静かに見守っているに違いない

 俳句で「踊」といえば盆踊り。先祖の霊を慰め、送るために、この世の者が集って歌い踊り、または練り歩くものだという。「読んでわかる俳句 日本の歳時記 秋」(小学館)にある

 徳島に限れば帰省した人も、観光で訪れた人も胸を躍らせるのが阿波踊りである。本紙別刷り特集で、徳島城博物館の根津寿夫館長が阿波踊りの起源3説を紹介し、こう語っている。「盆踊りに風流踊りの要素が合わさり、変化してきたのだろう。阿波踊りは生き物であり、今後どのように発展していくかも楽しみだ」

 <盆は皆に逢ふて踊つて一夜きり>大野林火。祖霊とまみえて、亡き人を思い踊る。帰省した人に交じって自らを省みながら、踊りの輪に入る。徳島市の阿波踊りはあすまでである。