鳴門の渦潮と聞かれて、どれほどの話ができるだろうか。きのうの本紙、世界遺産登録に向けた「語り部養成講座」の記事を見て、ふと思った
 
 海面が現在より30メートル低かった約1万年前に渦潮の発生が始まったという。平安時代には海賊が出没し、旅人は夜間に船で鳴門海峡を渡ったという史実もある。知れば知るほど興味が湧く渦。足を運び、風に吹かれれば、雄大さも怖さも実感できる。多くの画家は絵筆を走らせた
 
 見て、聞いて、学んで、語り部に。徳島ならではの風景、歴史をどこの誰にでも伝えられる、そんな一人になりたいと思う
 
 <汗しとど写楽の目して口をして>林翔。じりじりと暑い江戸の夏を、東洲斎写楽自身も目をかっと見開いて、絵筆を執っていたのかもしれない
 
 写楽といえば、徳島藩お抱えの能役者・斎藤十郎兵衛とされる。それなのに、写楽を徳島ゆかりの人として語り、伝えられる人はまだまだ少ない。斎藤の命日は3月7日。過去帳が発見されてから20年。2020年には没後200年を迎えるという
 
 徳島市のあわぎんホールで浮世絵に出合える「写楽・歌麿とその時代」(22日まで)が開かれている。下がり眉にわし鼻。強欲な金貸しもどこかユーモラスだ。足を運べば、役者絵とともに、調べても調べても分からない写楽の魅力を、つい語りたくなる。