旧優生保護法下で不妊手術を受けた障害者らの救済法が成立した。即日施行され、徳島県などで一時金支給の受け付けが始まった。

 救済法制定は、優生思想排除や共生社会実現への第一歩である。被害者が高齢になっていることを考えると、短期間で成立させたことは評価できる。

 だが、その中身は被害者が望む救済からは程遠いと言わざるを得ない。

 旧法は1948年に議員立法で制定された。96年に母体保護法に改正されるまで、障害者らに不妊手術を強いるなど非人道的な行為が続いた。

 被害者の一番の願いは、こうした基本的人権を踏みにじる政策を進めた国の誠意ある謝罪である。

 救済法では、被害者が大きな苦痛を受けたことに「われわれは、それぞれの立場において、真摯に反省し、心から深くおわびする」と前文に明記した。ただ、おわびの主体が「われわれ」と曖昧で、旧法の違憲性や国の法的責任には言及していない。

 安倍晋三首相は談話で初めて謝罪の意を表明したものの、その内容は救済法の文言をなぞった部分が多い。閣議決定もしておらず、形式的な色合いが強い。

 7地裁での国家賠償請求訴訟で、国は違憲性や法的責任を認めておらず、それに配慮したのだろう。被害者の気持ちに沿ったものとはとても言えない。

 救済制度の周知も大きな課題として残る。

 被害者は全国で約2万5千人に上るが、手術実施を裏付ける個人記録は約3千人分しか確認されていない。徳島県でも少なくとも391人が手術を受けたとみられるが、詳細は分かっていない。

 救済法は、プライバシーへの配慮を理由に個人通知の規定を設けなかった。周知は広報活動にとどめ、自己申告が前提だ。

 国は夏ごろに被害の認定審査会を設置し、記録のない人は手術痕や本人の陳述、家族の証言などを基に一時金支給を判断することにしている。

 ただ被害者の中には、知的障害などで意思表明が困難な人や、家庭の事情で言い出せない人もいる。本人の請求を待っているだけでは救いきれない。国は請求の壁を取り除く方策を考える必要がある。

 一時金は320万円にとどまり、国賠訴訟で被害者側が求めている最大3千万円台後半と隔たりが大きい。

 その上、ハンセン病補償法で認められた配偶者や遺族への補償も盛り込まれず、本人に限った点も納得できない。「家族もつらい思いをしてきたのにおかしい」との声が上がるのも当然だろう。

 救済法では、人権侵害を繰り返さないため、国が旧法制定の経緯や手術の実態を調べることを盛り込んでいる。

 国の責務として、法改正を含め救済を推進していくべきである。これで幕引きにしてはならない。