「誤算」という名の前口上に続き芝居の幕は上がった。権力を巡る攻防戦、波乱含みの物語である。伝統ある舞台だが、にわかに上演の決まった今回は、脚本が何度も書き換えられ、即興劇の色合いも濃い

 衆院選が公示された。消費税や北朝鮮、憲法と、課題は幾つも挙げることができるが、最大の争点は何をおいても1強政治継続の是非だ。これまで通り安倍晋三首相とともに「国難突破」を図るのか、それとも代わる人物が政権を担うのか

 戦いは、「代わる人物」の姿が見えないままに始まった。あの人ならば安倍さんの方がいい、あの人なら安倍さんよりも、といった選択が不可能なのである。分かりにくいこと、この上ない

 舞台であれば、後のお楽しみというのも、スリリングで面白い。このあいまいさは選挙戦術上、有効なのかもしれないが、有権者に対する態度としては不誠実だ
 
 「始め半分」という。物事の成否の半分は取っ掛かりにある。振り出しは「大義なき」ともいわれる、視点を変えると弱すぎる野党が招いた解散なのだから、筋書きも奇妙に進んでいるのだろう

 政治は国民を映す鏡である。「選挙」劇場の最も興味深い点は、有権者の一票が役者をふるいにかけ、次の展開を決めるところにある。「終わりよければすべてよし」といくよう、しっかり吟味したい。