「名前は伏せてください」。男性は何度も念を押した。「今はそんな時・・・」と言いかけて、続く言葉をのみ込んだ
 
 徳島市の文化の森で始まった障害者芸術祭「エナジー2017」に、異彩を放つ作品があった。柔らかい色調のカンバスの3分の2を真っ黒で荒々しい「正」の字が占める。下にややつぶれた調子で「直」。画面からはみ出す「正直」が、あなたはどうだ、と問いかけてくる
 
 作者に聞いた。上板町の福祉サービス事業所「niyary.(ニヤリィ)」に通っていること、初めての出品であること、何点かの質問に答えた後で「名前が出ると、障害に絡んであれこれと批判される」
 
 そんな時代でもない、とは思う。けれども社会の空気は、男性の心配が取り越し苦労といえないほどに、ぎすぎすしてはいないだろうか。51歳、何度も嫌な目に遭ってきたという
 
 もう少し優しくなってもいいんじゃないか。もうちょっと正直に生きてもかまわないのでは。19歳と20歳、男性と同じ事業所に通う猪山智さん、細井優太さんのリズミカルな絵画が、色使いが巧みな58歳、中西文明さん(しあわせの里)の水彩が・・・。会場を歩けば300点を超す作品が口々に語りだす
 
 東京五輪のエンブレムに採用された藍色にこだわったコーナーもある。芸術祭は15日まで。心を仕切り直す機会にも。