なぜ、警告は生かされなかったのか。被害があまりに深刻なだけに、悔やんでも悔やみきれない。政府の地震調査研究推進本部が2002年7月に発表した「長期評価」である

 千葉県から青森県の沖を南北に走る日本海溝のどこでも、大きな津波が起きる可能性がある。そんな内容だった。実際、公表から約9年後、大津波が東京電力福島第1原発を襲った

 推進本部は1995年の阪神大震災を機にできた組織である。六つの省庁に分かれていた地震の研究、調査、観測の仕事を1カ所に集め、総合的に進めるものだ。南海トラフなど、大地震の発生確率を出していることでも知られる

 それまでの予知偏重を改め、「地震災害の軽減」を目標に掲げたのも特徴の一つだ。ただ、成果を生かせるかどうかは受け止める側の姿勢次第。きちんと対応しなければ、せっかくの研究も宝の持ち腐れになる

 その成果の価値が真正面から争われたのが、福島原発事故で被災した人たちが国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟である。福島など3地裁は、長期評価により大津波を予見できたと認定した

 国と東電は科学的に不十分だったと主張しているが、「安全神話」にとらわれ、聞く耳を持たなかったのではないか。しっかりと反省し、責任を認める。そうでないと、警告はまた見過ごされてしまう。