40年前のきょう、夕方、何をしていただろう。部活の帰り、徒歩通学だったから、本当はいけないことだけど、友人の自転車の後ろにまたがっていたか

 「たたりじゃー」のCMが話題になった横溝正史原作の映画「八つ墓村」の話だったか、歌謡チャートを席巻していたピンク・レディーか、あるいは「普通の女の子に戻りたい」と解散宣言をしたキャンディーズの話か。いずれにしても、たわいもない会話に興じながら、家路に就いていたはずだ

 横田めぐみさんと同じ13歳の中学生だった。筆者のありふれた日常は、今の今まで続くわけだが、めぐみさんはあの日突然、北朝鮮に奪われた。それから泣き暮らしただろう日々の長さを思うと、胸がつぶれそうになる

 時折、衛星写真で見る東アジアの明々とした夜景に、ぽっかり黒い空間がある。北朝鮮である。暗く閉ざされた国で40年。同じ月や星を見上げ、故郷の両親を思い浮かべる日もあるに違いない

 帰りを待ちわびる父滋さんは85歳、母早紀江さんは81歳。国家による犯罪を絶対に許さず、まだ捕らわれている人たちとともに、一刻も早い帰国に向けて、全力を挙げなければ

 課題が多いのは確かだが、その日が来たら言ってあげたい。「ここはあなたの母国、自由の国ですよ」。普通の日本の女性に戻れた、と実感できるように。