勇敢な記者は臆病だ。身の危険を感じれば、神経を研ぎ澄ます。死んだら負けだと分かっているからだ。しかし、彼女は殺された。地中海に浮かぶ島国、マルタでの出来事である
 
 ダフネ・カルアナガリチアさん、53歳。当局に頼らず、自らの取材で不正を追及する「調査報道」で知られた。先月、車で自宅を出てすぐ、道に仕掛けられた2個の爆弾が破裂した
 
 政治家の腐敗には容赦ない。自身のニュースサイトで「詐欺師」と攻撃する。死の直前に「詐欺師は至る所にいる。絶望的な事態だ」と記し、それが最後のメッセージとなった
 
 タックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴いた「パナマ文書」の報道にも関わった。公表されたデータを分析し、マルタの政治家たちを追い込んだという。身の危険を感じ、警察に相談していたとの情報もある。犯人はまだ分からない
 
 租税回避地は不正蓄財の温床になっている。匿名の壁に守られ、誰が会社をつくり、誰が取引しているのか、外部からは突き止められないからだ
 
 パナマの法律事務所の内部文書が流出したことで、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平主席など、絶対権力者の周辺にも疑惑が及んだ。今、新たな流出データによる「パラダイス文書」の報道が続く。真実にふたをしたい人々と、それを開けようとする記者との闘いだ。